18  あとがき

この書き物は,2024年と2025年前期に東京大学教養学部で担当させてもらうことになった,「心理統計実習」のためのテキストです。Rの使い方からベイジアンモデリングまで,割と好き勝手に中身を詰め込んで書いてあります。自分の独断と偏見で中身を作っていますし,いちおうの章立てもありますがボリュームを気にすることなく書いてあります。1コマで一章のような進め方をする,いわゆる「テキスト」とは違うので使い勝手が悪いかもしれません。実際,2025年度の授業では見出しを提示して受講生が聞きたいテーマを中心に扱う,ということにしました。扱っていない章については自分で読んでおいてね,というスタイルで使っています。

演習の授業なのでRを使うことになるのですが,生成AIがある昨今,必ずしも自分の手で書く必要がないかもしれません。そこでこのテキストではコピーできるようにQuartoで書き,Webページで提供するというスタイルをとりました。生成AIを使うこと自体は私は否定しませんし,このテキストも生成AIによるサポートが入っています(誤字脱字のチェックや,課題にどれだけ正答するかをチェックするなどしています)。大事なのは生成AIを使うことであって,使われる側に回らないこと。目的は単位を取ることではなく自分が成長することであり,自分が学ぶ,知る楽しみを機械に奪われてはならない,という心意気です。

また,オンライン資料にしているのは,RやStanがフリーソフトウェアであり,発展し続けるものだからということでもあります。バージョンが上がる,リンク先が変わるというのは頻発しますので,オンライン教材にすることで随時アップデートできるようになります。紙媒体への憧れもあるので,PDFとePub形式も作りましたが(笑)

2024年度はまだ全ての章がなく,特にベイズに関する章は2025年度に授業をしながら書き加えるというスタイルでした。本当は2024年度中に完成するはずだったんですが,2025年度の夏休みいっぱいまでかかりました。でもそのおかげで,多変量解析やベイジアンモデリングなど,余裕を持って盛り込めましたけど。

ここに書いてある内容は,私が他のテキストや資料,書籍に書いたことと重複するところが少なくありません。同じ人間が書いているのですから,ご容赦ください。棲み分けする必要があるのかどうかもわかりませんが,このテキストはやや演習・実践寄りというところが違うでしょうか。ただベイズ統計を含め,心理統計の演習というシーンで必要な情報を統一的に扱っている資料があったほうがいいなと思っています。何かのお役に立てれば幸いです。

自分の授業テキストですから,校閲や査読が入ってるものではありません。もし誤りがありましたら,単に私の責任です。もしお気づきの点がありましたら,ご指摘いただけますとすぐに修正しますので,ご連絡ください。

2025年9月20日 小杉 考司