U1. Rの基礎

ユニット概要

分類: 幹(全員必須)

依存関係: U0 → U1

学習目標:

  • RStudioの4つのペインの役割を理解する
  • プロジェクトを作成し、作業フォルダを管理できる
  • パッケージのインストールと読み込みの違いを理解する
  • ヘルプを使って関数の使い方を調べられる
  • オブジェクトへの代入と基本的な計算ができる
  • コメントとセクション区切りを活用できる

事前知識: RとRStudio

Rとは

Rは統計に特化したプログラミング言語です。フリーソフトウェアであり、誰でも無償で利用できます。心理学をはじめ、統計を使うあらゆる学問領域で広く使われています。

RはCRAN(The Comprehensive R Archive Network)で公開されています。自分のOSに合った最新版をダウンロードしてインストールしてください。

RStudioとは

RStudioは統合開発環境(IDE)です。R単体でも分析は可能ですが、RStudioを使うことでスクリプトの編集、ファイル管理、パッケージ管理、ヘルプの参照などが効率的に行えます。

料理に喩えるなら、R単体は包丁・まな板・コンロだけで調理するようなもの。RStudioは広い調理スペース、使いやすいシンク、便利な調理器具が揃ったキッチンです。

Posit社のサイトからDesktop版をインストールしてください。

RStudioの4つのペイン

RStudioを起動すると、画面は4つの領域(ペイン)に分かれています。

ペイン 役割
エディタ(ソース) スクリプトや文書を書く場所。Runボタン(またはCtrl/Cmd+Enter)でコンソールに送って実行する
コンソール R本体。コマンドを受け取り、計算結果を返す。プロンプト(>)が入力待ちの印
環境(Environment) 現在メモリ上にあるオブジェクト(変数や関数)の一覧。Historyタブでコマンド履歴も見られる
ファイル/プロット/ヘルプ Filesタブでフォルダ操作、Plotsタブで描画結果、Packagesタブでパッケージ管理、Helpタブでヘルプ参照

ペインのレイアウトは Tools > Global Options > Pane Layout から変更できます。

プロジェクト

RStudioにはプロジェクトという仕組みがあり、分析に必要なファイルをフォルダ単位で管理できます。プロジェクトを開くと、作業フォルダ(Working Directory)が自動的にそのフォルダに設定されます。

作業フォルダとは、Rが「今どこで作業しているか」を表す場所です。データファイルを読み込むとき、作業フォルダ内のファイルならファイル名だけで指定できますが、別の場所にあるファイルはパス(場所の指定)が必要になります。

新しいプロジェクトは File > New Project、既存のプロジェクトは File > Open Project(または.Rprojファイルのダブルクリック)で開けます。

パッケージ

R単体でも基本的な分析は可能ですが、より高度な分析にはパッケージ(関数群)を導入します。CRANで公開されているパッケージだけでも数万件あります。

パッケージの利用は2ステップです:

  1. インストール(ダウンロード): install.packages("パッケージ名") — 一度だけでOK
  2. 読み込み(有効化): library(パッケージ名) — Rを起動するたびに必要

本ゼミではpacmanパッケージのp_load()関数を使います。これはインストールされていなければ自動でインストールし、読み込みまで一括で行ってくれます。

# pacmanだけは先にインストールしておく
install.packages("pacman")

# 以降はp_loadで読み込み(未インストールなら自動インストール)
pacman::p_load(tidyverse, psych)

ヘルプの使い方

関数の使い方がわからないときは、ヘルプを参照します。

help("mean")   # mean関数のヘルプを表示
?mean           # 同じ意味の省略形

ヘルプには以下の情報が記載されています:

  • Description: 関数の概要
  • Usage: 引数の書き方
  • Arguments: 各引数の意味
  • Value: 戻り値(返される結果)
  • Examples: 使用例

ヘルプの末尾にある「Package」を見ると、その関数がどのパッケージに含まれているかがわかります。


ランクC: 基礎知識を確認しよう

1-C-1

RStudioの「コンソール」ペインは、スクリプトを書くための場所である。

スクリプトを書くのはエディタ(ソース)ペインです。コンソールはR本体であり、コマンドを受け取って結果を返す場所です。エディタに書いたコードをRunボタン(Ctrl/Cmd+Enter)でコンソールに送って実行します。


1-C-2

RStudioの「Environment」タブには何が表示されますか?

Environmentタブには、Rが現在保持している変数や関数などのオブジェクトが表示されます。ファイル一覧はFilesタブ、コマンド履歴はHistoryタブ、パッケージ一覧はPackagesタブです。


1-C-3

Rのパッケージは一度インストールすれば、Rを再起動しても自動的に読み込まれる。

インストールは一度でOKですが、読み込み(library())はRを起動するたびに必要です。インストールはPCにダウンロードする作業、読み込みはRのメモリに展開する作業です。pacman::p_load()を使えば、インストールと読み込みを一括で行えます。


1-C-4

#で始まる行はどのように扱われますか?

#以降はコメントアウトされ、Rは実行しません。スクリプトに「今何をしているか」のメモを書くために使います。複数行を一括でコメントアウトするショートカットはCtrl+Shift+C(Mac: Cmd+Shift+C)です。


1-C-5

Rで代入に使う記号はどれですか?

<-(小なり + ハイフン)が代入演算子です。左矢印のイメージで、右辺の値を左辺のオブジェクトに代入します。=でも代入できますが、Rの慣習として<-が推奨されます。RStudioではAlt+-(Mac: Option+-)がショートカットです。

x <- 10   # xに10を代入

1-C-6

RStudioの「プロジェクト」を開くと自動的に設定されるものは何ですか?

プロジェクトを開くと、そのプロジェクトフォルダが作業フォルダ(Working Directory)に設定されます。これにより、フォルダ内のファイルをファイル名だけで参照できます。パッケージの読み込みやスクリプトの実行は自動では行われません。


1-C-7

help("sqrt")?sqrtは同じ意味である。

どちらもsqrt関数のヘルプを表示します。?関数名help("関数名")の省略形です。ヘルプにはDescription(概要)、Usage(使い方)、Arguments(引数)、Value(戻り値)、Examples(使用例)などが記載されています。


1-C-8

既にオブジェクトに値が入っている状態で、同じオブジェクトに別の値を代入するとどうなりますか?

Rでは警告なしに上書きされます。

x <- 3
x <- 7   # xは7になる(元の3は失われる)

似たようなオブジェクト名を使い回していると、本来意図していた値と違うものが入っていることがあります。Environmentタブで確認する習慣をつけましょう。


1-C-9

次のうち、オブジェクト名として使えるものはどれですか?

2dataは数字で始まるため不可。TRUEforはRの予約語なので使えません。my_dataのようにアルファベットやアンダースコアで構成された名前が使えます。

予約語の例:if, else, for, while, function, TRUE, FALSE, NULL, NA, NaN, Inf, break, next, repeat, return


1-C-10

pacman::p_load(tidyverse)パッケージ名::関数名という書き方は何を意味していますか?

パッケージ名::関数名は、その関数がどのパッケージに属するかを明示する書き方です。異なるパッケージに同名の関数がある場合(例: dplyr::filterstats::filter)、どちらを使うか区別するために重要です。


1-C-11

Rのコンソールに>ではなく+が表示されている場合、何を意味していますか?

+は、前の行の入力がまだ完了していないことを表します。たとえばカッコやクォーテーションが閉じられていない場合に表示されます。この状態を抜けるには、入力を完成させるか、Escキーを押してキャンセルします。


1-C-12

エディタペインに書いたスクリプトを実行するショートカットキーはどれですか?

Ctrl+Enter(Mac: Cmd+Enter)で、カーソルのある行(または選択範囲)をコンソールに送って実行します。Ctrl+Shift+Enterはスクリプト全体を実行するSourceに対応します。Ctrl+Sはファイル保存です。


ランクB: 実践スキルを磨こう

1-B-1

Rで以下の計算を実行してください。

  1. \(\frac{5}{6} + \frac{1}{3}\)
  2. \((-2)^4\)
  3. \(2\sqrt{2} \times \sqrt{3}\)

Rでは/が割り算、^が冪乗、sqrt()が平方根です。

# 1. 5/6 + 1/3
5/6 + 1/3

# 2. (-2)^4
(-2)^4

# 3. 2*sqrt(2) * sqrt(3)
2 * sqrt(2) * sqrt(3)

結果:

  • 5/6 + 1/31.166667
  • (-2)^416
  • 2 * sqrt(2) * sqrt(3)4.898979

1-B-2

オブジェクトx10を、y3を代入してください。その後、x + yx * yx %% y(余り)を計算してください。

x <- 10
y <- 3

x + y    # 13
x * y    # 30
x %% y   # 1(10を3で割った余り)

%%は剰余(余り)を求める演算子です。%/%は整数除算(商の整数部分)を返します。


1-B-3

sqrt関数のヘルプを表示してください。ヘルプの中から以下を確認してください:

  • この関数はどのパッケージに含まれているか
  • どんな引数を取るか
?sqrt
  • パッケージ: base(ヘルプ画面の左上に表示される)
  • 引数: x(数値ベクトル)

ヘルプのExamplesセクションにあるコードはそのままコピーして実行でき、関数の動作を確認するのに便利です。


1-B-4

pacmanパッケージを使ってtidyverseを読み込んでください。読み込み後に表示されるConflictsメッセージを読み、どの関数が上書きされたか確認してください。

Conflictsメッセージにはdplyr::filter() masks stats::filter()のような表示が出ます。これは「statsパッケージのfilter関数がdplyrパッケージの同名関数で上書きされた」という意味です。

pacman::p_load(tidyverse)

表示されるConflictsから、少なくとも以下の2つが上書きされることがわかります:

  • dplyr::filter()stats::filter() を上書き
  • dplyr::lag()stats::lag() を上書き

上書き前の関数を使いたい場合はstats::filter()のようにパッケージ名::関数名で指定します。


1-B-5

この講義用の新しいプロジェクトを作成してください。作成後、以下を確認してください:

  1. RStudioのウィンドウ右上にプロジェクト名が表示されていること
  2. FilesタブでGo To Working Directoryを実行し、プロジェクトフォルダに戻れること
  3. 新しいRスクリプトファイルを作成し、名前をつけて保存できること

File > New Project から新しいプロジェクトを作成します。New Directory > New Projectを選び、プロジェクト名とフォルダの場所を指定します。

  1. File > New Project > New Directory > New Project
  2. プロジェクト名(例: zemi2026)を入力し、保存場所を指定
  3. Create Project をクリック

確認: - 右上に「zemi2026」と表示される - Filesタブの More > Go To Working Directory でプロジェクトフォルダに移動 - File > New File > R Script で新しいスクリプトを作成 - Ctrl+S(Cmd+S)で名前をつけて保存

プロジェクトを閉じるには File > Close Project、再び開くには.Rprojファイルをダブルクリックします。


ランクA: AI協働に挑戦しよう

1-A-1

課題: AIに「Rで使える便利なショートカットキーを10個教えて」と聞いてみてください。

教えてもらったショートカットを実際にRStudioで試し、以下をまとめてください:

  • 本当に動作したもの
  • 自分が今後よく使いそうなもの
  • AIの回答が間違っていたもの(あれば)

提出物: AIとの対話ログ、試した結果の一覧。


1-A-2

課題: 「心理統計でよく使うRパッケージ」についてAIに相談してください。

以下を明らかにしてください:

  1. 自分の研究テーマ(卒論のテーマが決まっていなければ仮で考える)で使いそうなパッケージ
  2. それぞれのパッケージが何をするものか
  3. 実際にインストールして、ヘルプを見て確認できたか

提出物: AIとの対話内容、パッケージリスト、ヘルプで確認した結果。


まとめ

このユニットでは、R/RStudioの基本的な使い方を学びました:

  • RStudioの4ペイン: エディタ、コンソール、環境、ファイル/プロット/ヘルプ
  • プロジェクト: 作業フォルダの管理とファイルの整理
  • パッケージ: インストール(一度だけ)と読み込み(毎回)の2ステップ。pacman::p_load()で一括化
  • ヘルプ: ?関数名で使い方を調べる
  • オブジェクトと代入: <-で値を代入し、計算に使う
  • コメント: #で始まる行はRに無視される

次のユニット: U2. データ型とオブジェクトでは、ベクトル、リスト、データフレームなど、Rのデータ構造について詳しく学びます。


進捗: あなたは今 1-C-12 まで完了しました!(と仮定)次は 1-B-1 に進みましょう。